最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
 昔からそうだ。祖母の家に来るたびに、裕也は私に言うことを聞かそうと言葉や、ときにはこうした暴力を振るってきた。

「ほら。大事な旦那が妻が従兄と不貞を働いたなんて知ったらショックを受けるぞ? お前だって副社長の妻の立場を捨てたくないだろ? 許してほしいって泣いて謝れよ。なんでも言うことを聞くって」

 子どもの頃は、叔父一家が来ると祖母のそばを離れず、自分を守っていた。けれど、今はどちらも大人で力もさも歴然だ。なにより、ここには私を守ってくれる人は誰もいない。

 私、本当にひとりなんだ――。

「臨!」

 名前を呼ばれたのと同時に、上に乗っていた裕也がすごい音と共に消える。視線をずらすと、彼は横に吹っ飛んでいた。

「え?」

「ってぇ……」

 うめき声をあげる裕也を呆然と見つめる。いったい、なにが起こったのか。

「臨、大丈夫か!?」

 切羽詰まった様子で貴治さんが尋ねてくるので、一瞬、目を疑う。だって、そんなはずない。どうして貴治さんがここに……。

「なにがあったんだ? 怪我は? 今、警察と救急車を――」

「だ、大丈夫です!」

 慌てて答えると、貴治さんは私の体をそっと起こした。

「すみません。彼は従兄なんです。警察ではなく叔父に連絡してもらえませんか?」

 貴治さんは私と裕也を交代に見た。
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