最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
「本当に、警察はいいのか? 住居侵入罪と暴行罪。これは立派な犯罪だぞ」

 貴治さんの気持ちを汲みたい気もしたが、大事にしたくない。叔父のためでも、ましてや裕也のためでもない。私はまだ貴治さんの妻だから、警察沙汰になったら少なからず彼に影響が出てしまう。

 ああ、馬鹿だな、私。貴治さんとは、どうせ別れるのに……。

 でも、貴治さんが好きだから。彼の妻でいる間は、貴治さんのためにできることをしたい。

 叔父夫婦を呼び出し、貴治さんは警察を呼ばない代わりに、彼の会社でお世話になっている弁護士を同席させた。

 状況を見た叔父たちは、息子よりもまず私を責めにかかった。しかし、貴治さんと弁護士の存在に一気におとなしくなる。

 貴治さんに言われていた通り私は余計な口を挟まず、やりとりはすべて貴治さんと弁護士さんにお任せ、成り行きを見守った。

 私のケガに対する治療費や慰謝料をはじめ、今回の一連に関する示談金は、あまりにも高額が提示され、さすがに叔父夫婦もふたつ返事で受け入れることはできず、なんとか減額を希望してくる。しかし、貴治さんは絶対に妥協しなかった。

「正直、金なんてどうでもいいんです。あなた方が今まで臨にしてきた仕打ちが今回の件につながった。何度も忠告しましたよね? 今すぐ刑事告訴に切り替えてもいいんですよ?」

 下手をすると、叔父夫婦は買ったばかりのマンションを手放さなくては、ならなくなるかもしれない。

 そして示談金に加え、もう二度と私や貴治さん、そしてこの家に近づかないことを同意させた。つくづくこの家が今、貴治さんの名義で助かったと感じる。
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