村八分にされた不遇の娘は神様の子供を授かり溺愛される

それは葵が６歳になったときに明確になった。
６歳になった葵は寺子屋へ行くようになっていたが、その合間に料理屋の手伝いもするようになっていた。

「葵は将来、この店を継ぐんだからな。そのためにも読み書きそろばんは必要だ。しっかり学んでおいで」

と、父親はいつも嬉しそうに語った。
両親が喜ぶ顔が見たいがために葵は学問もお店の手伝いも一生懸命だった。

でもある時、寺子屋での勉強が追いつかなくなっていることに両親が気がついた。

「どうしたの葵。勉強が難しいの？」
母親の問いかけに葵はキュッと唇を引き結んで左右に首を振った。

なにか、言いたくないことがあるみたいだ。
「それじゃどうしたの？」

もしや一緒に勉強している子たちや、師匠との相性が悪いんじゃないか。

そう懸念していた母親だったが、話は予想外の方向へと向かった。
「お母ちゃん。葵ね、みんなが見えているものが見えないの」