大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
「ミト、そっちじゃなくてこっちにおいで」

「はい?」

ギョッとして見ると、セルファは自分の隣を指し示していた。

『こういう日も、いつもの時間まで一緒にいて、できる限りのスキンシップとることになってるんだよ。めんどくせーけど』

ミトは影の言葉を思い出した。
自分はセルファに夢中ってことになっている。ここで拒否するのはおかしい。

「あ、はい…」

ミトは若干顔を引きつらせつつ、セルファの隣に移動した。
少しセルファと距離をとって座る。

(ああ、確かこういう日はあまり濃密な行為を好まないと言っていたな)

セルファは影からの説明を思い出していた。
しかし、キスくらいはしておくべきだろう。

「ミトは心配性だね」

そう言って、ミトの肩を抱いた。
俯いて固まるミト。
拒否したいけど、してはいけないから耐えた。
セルファの顔が近づいてくる。

「あのっ!」

ミトはパッと顔を上げた。
唐突な動きに少し驚くセルファ。

「イザリアってどんな国でしたか?」

セルファはかわされたように感じて不愉快に思ったが、それを顔には出さず、ミトの質問に答えた。

「交易で栄えた大きな港のある美しい国だったよ」

「私、行ったことないんです」

ミトはなんとかして妙な雰囲気から脱したい。

「遠いからね」

「ラミリアには海がないから、港町ってあこがれがあります」

これは本音だった。

「海のある国って、どんな感じですか?」

「ローザンにも一応海はあるんだけどな」

「あ、そうでしたよね。陸路しか通ってないので海に面したイメージがなかったけど、一度港にも行ってみたいなぁ…」

これはミトの本気の呟きである。
セルファはミトの横顔を眺めた。
さっきまでのぎこちない表情から一変、瞳が生き生きと輝いている。
王宮見学をするくらいだから、好奇心は人一倍旺盛なのだろう。
そこでセルファに1つ疑問が生まれた。
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