大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
ユフィーリオとセルファのやりとりをミトは思い出した。
自分はもちろん、ティアラとアメリアとも違う、二人だけの雰囲気があった。公務もこなすユフィーリオへのセルファの眼差しは、明らかに特別な感情が込められていた。
言葉遣いにかしこまった感がなく、それが親しみの深さに思えたし、何より見つめ合うだけでお互いが分かり合えているような、濃い空気があの二人の間に流れていた。

(私がセルファの一番になることは、ありえないだろうな)

ミトは、たった1日でそう悟った。
元々一番になる気などなかったが、今になって後悔に近い感情が押し寄せる。
立場の一番ではなく、人として誰かの一番になってみたかった。
そして、自分もその人を精一杯愛して、お互いが一番大事だと思い合えるような関係を築いてみたかった。

「それも叶わぬ夢か」

自分の気持ちに区切りをつけるように、ミトは呟いた。

「まあ、セルファは綺麗な男の人だし、優しいし、なんてったって、自由な時間が多いんだし、それでよしとするべきでしょ」

そう自分に言い聞かせる。
まだたったの2日目だ。きっと、少しずつ慣れて、セルファともそれなりの距離で、穏やかな関係を築いていけるだろう。

「横暴な王族だって多いんですもの。良い国に嫁げて良かったと思わなきゃね」

またもや出る独り言。

「……ふぅ」

なんだかどっと疲れて、ミトはベッドに突っ伏した。
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