大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
…。

(ん?)

「…ト…」

(…なに?)

「ミト」

「え!?」

自分を呼ばれていることに気付き、ミトはガバっと体を起こした。

「ひえっ!」

目の前にセルファがいて、思わず仰け反るミト。

「ビックリさせてしまったようですね」

セルファは眉を寄せて困ったように笑った。

「良く寝ていたから、そのままにしようかと悩んだけど、今日は一緒に過ごしたくて起こしてしまいました」

そう言って、セルファはそっとミトの髪に触れた。
時間はわからないけど、もう深夜なのだろうか。いつのまにか深く眠ってしまったようだ。
外は真っ暗で、部屋の薄暗い照明にあたって、セルファの顔が美しく輝いているようだ。

本当に綺麗な男の人。
だけど…。

「あなた…、誰…?」

ミトはセルファを凝視して、そう問いかけた。

「え…?」

ミトの呟きに、セルファは意味がわからない、といった風に声を漏らした。
しかし、ミトは一瞬の驚愕を見逃さなかった。

「あなた、一体誰なの?」

少し離れて、ミトはもう一度聞く。

「どうしたんですか?ミト。寝惚けているのかな」

セルファは苦笑した。
先ほどの驚愕はもう欠片もない。

「まさか、さっきまで一緒にいた私を忘れてしまったわけじゃないですよね?」

セルファは余裕の笑みを浮かべる。
ミトは混乱していた。
目の前にいるのは、どう見てもセルファだ。なのに、何かが違う。
何が違うのかはわからないが、とにかく目の前にいるこの綺麗な男が、晩餐会で一緒にいたセルファではないということだけはわかった。
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