大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
「昔、私に会ったこと、覚えてる?」

「ユフィーリオ様に?」

いつのことを言っているのか、影はさっぱりわからない。

「ええ。数日前、私があなたを見かけた場所で、もっとずっと前。
私はセルファに会う前に、あなたと会っているの。
あの時私は12歳だったからもう8年も前のことだけど、私は昨日のことのように覚えてるわ…」

影は声を漏らしそうになって、寸前で耐えた。
そうか、あれはやはりユフィーリオだったのか。

「いえ、全く記憶にありません」

しかし、影はそう答えた。
その方が良いという直感が働いた。

「そう…」

ユフィーリオは明らかに落胆した様子だ。

「あのとき12歳だった私は、お父様に連れられて王宮に来たのに、余所見をしていてはぐれてしまったの。
迷い込んだ先にあなたがいた。迷路のような王宮の中で、ぽっかりとオアシスみたいに綺麗なお庭があって、あなたは天使みたいだったわ」

ユフィーリオは何が言いたいのだろう。
影は嫌な予感がした。

「私が、『何してるの?』って聞いたら、あなたは『休憩という名のサボリ』って答えたのよ」

「ユフィーリオ様、とにかく王宮へ」

影は話を遮ろうとした。
この先を聞いてはいけない。

「行かないと言ったわ」

ユフィーリオは静かに首を振った。

「しかし、セルファ様はユフィーリオ様を待ち望んでおります」

「あのときのあなたは本当に綺麗だった。そしてとても優しかった。迷子になった私に道を教えてくれたの」

ユフィーリオは影の言葉を聞かずに話を続けた。
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