大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】

第48話 ミトとセルディオの夜

影はやるせない思いで1日を過ごしていた。
セルファと自分、油断するとその存在意義を考え込んでしまう。
そうならないように、淡々と公務をこなしていた。

ユフィーリオの発言は、影にとって大きなショックだった。
影はセルファを身勝手だと思いつつも、そこまでしてユフィーリオを愛し続ける強い意志を認めていた。
そして、ローザンの国王となるために、セルファがどれだけ努力してきたかも知っていた。
自分を省みず頑張っているのに、最愛の人に信用されないとは、こんな理不尽なことがあっていいのだろうか。

自分は結局国王に逆らえず、言われたことをやるのみ。
せめて、ユフィーリオをセルファの元へ届けなければと思ったのに、結局それも叶わなかった。

自分のふがいなさに落胆した。
自分はこの国にとって、最初から不要な存在なのかもしれない。
自分がいなければ、セルファはただ一人のローザン王位継承者として、余計なことを考えず打ち込めただろう。
ユフィーリオとの結婚も、自分を引き合いに出すようなことはせず、二人で解決しただろう。

母親も自分がセルファの後に生まれたことで苦しんだ。

(オレは、この国の疫病神か…)

自虐的になる自分を影は止められなかった。
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