大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
今夜は影が来る日。
ミトは久しぶりに王宮探検をし、随分と気分が明るくなっていた。

(また王宮探検できる日があるなら教えてもらわないと!)

影が来るのが待ち遠しいミト。
いつも通りの時間にドアがノックされた。

「はい。お待ちしておりましたわセルファ様」

ニッコニコでドアを開けるミト。

「ミト…」

しかし、影の様子を見て眉を顰めた。

「どうしました?中に入れてください」

影が微笑する。

(気のせい…、じゃないわよね)

「ええ、どうぞ」

ミトはとりあえず影を部屋に招きいれた。

「ねえ、大丈夫?」

そして、扉を閉めてすぐにそう聞いた。

「大丈夫って、何がだよ」

口調を自分のものに戻す影。
影の切り替わりの早さに、ミトはすっかり慣れていた。

「ん?ん~とね、なんか、泣きそうな顔してたから、ビックリしちゃって。何かあった?」

ミトにそう言われて、影は苦笑した。

「そっか、ミトにはそういう特技があったよな」

部屋に入るまで、影は完璧にセルファを演じているつもりだったのだ。
もちろん、誰が見てもセルファそのものの状態を保っていた。
しかし、ミトには通用しない。

「よくよく考えると、ミトの能力って国交にすっげー使えるかも。おまえが交渉の場にいれば、相手の表も裏も瞬時に判断するんだろうな」

「ん?その回答は、やっぱり泣きそうな気持ちだってこと?」

「ミトがそう感じたんなら、そうなんだろうな」

影は定位置のソファに座りながら言った。

「なによそれ、自覚ないってこと?」

ミトはお茶の準備を始める。
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