悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





「ユリウス!」



この閉鎖的だが、どこか美しく不気味な部屋でやっとユリウスの姿を見つけ、私は思わずユリウスの名前を呼ぶ。
ユリウスは鉄格子の向こう側で力なく立派な1人掛けのソファに座っていた。



「…ス、テラ?」



ユリウスがぼんやりとした表情で顔を上げる。その金色の瞳にはいつものような冷たさも力強さもない。

あのユリウスがここまで弱っているとは。
一体何があったのか。



「私だよ!ユリウス!」



私は急いでユリウスの側まで駆け寄り、鉄格子に手を伸ばした。
鉄格子を掴んだ両手からひんやりとした鉄の冷たさを感じる。こんなものの中にユリウスが捕えられていたなんて。



「…ステラ?ステラなのか?」



最初こそ、ぼーっとしていたユリウスだったが、はっきりと私の姿を捉えると、だんだんその瞳に活力が戻ってきた。




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