悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「ステラ!」
私の名前を呼んでユリウスがこちらに駆け寄る。
それと同時にジャラリとユリウスの足元から重たい金属音が聞こえてきた。
「…っ!ユリウス、それ!」
まさかと思い、ユリウスの足元に視線を向ければ、ユリウスの右足首には足枷がつけられており、鎖で壁に繋がれていた。
ここでユリウスは一体どんな目に遭ってきたのか。
足枷だけではない。
よく見れば、ユリウスは数日前よりも目に見えてやつれている。
鉄格子と足枷で物理的に自由を奪われ、こんなにもやつれるほど体力まで奪われ、ユリウスはここで完全に逃げられないようにまるで猛獣のように監禁されていたのか。
ユリウスの姿に胸が痛くなっていると、ユリウスは鉄格子越しから、自身の手を出して、私の頭を優しく撫でた。
力が入らないのか、その手は少しだけ震えている。
「そんな顔をするな。俺なら大丈夫だ」
そしてユリウスは私を落ち着かせるように優しくそう言った。
優しくて心地いい感覚が私の頭からゆっくりと全身へ広がっていく。ユリウスにこうされることが私は嫌ではないらしい。