悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





それでも私はキースに渡された焦茶の大きなコートのフードをぐっと引っ張り、あまり周りに顔を見られないよう、また怪しまれないように、周りを警戒しながら移動した。 
幼い私ほど探されていないとはいえ、用心することに越したことはないだろう。

ルーワの森から一度、マルナへ出て、そこからさらに国境の検問所へと向かう。
そして検問所へ辿り着くと、私は帝国外へと出ようとしている人の列に並んだ。
この検問所はどの時間帯でもだいたい人が並んでいるが、今の昼前の時間帯が一番人通りが多い。
人通りが多いということは忙しいということだ。
キースが用意してくれた書類に不備など一つもないだろうが、念には念を入れたい。
どうせなら一番忙しい時間帯に行き、雑な処理を受けて、晴れて外へと逃げたい、という魂胆から私はこの時間帯を選んでいた。

検問所の入り口からここまで50メートルはあるだろうか。
まだまだ順番は来ないが、私は焦ることなく、気長に自分の番を待つことにした。

帝国外まであと少しだ。




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