悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
5.逃げられない
帝国外へと出る為に、検問所の列に並ぶこと数十分。
1時間もしないうちにやっと私の番がすぐそこまでやってきた。
「スムーズな手続きができるように書類の準備と本人確認の為に帽子、フード、マスクなどをしている方は事前に取ってお待ちください。ご協力をお願いします」
並んでいる人たちに、検問所の職員である女性が先ほどからそうアナウンスする。
そのアナウンスを聞き、私は顔が見えないように深く被っていたフードを下ろした。
「では、次の方。こちらへどうぞ」
「はい」
検問所の入り口の横にある受付から男性の職員に呼ばれ、私は前へと進む。
受付には私と職員を隔てるように机があり、その受付の横、検問所の入り口と呼ばれる場所には仰々しい大きな魔法陣があった。
机の向こうにいる職員が許可しない限り、この魔法陣の上を跨ぎ、向こうに行くことができない仕様になっているのだ。
「書類の提出をお願いします」
「はい。お願いします」
職員に促されて、私は予め用意しておいた偽の書類を提出する。
何でもない顔で職員へと視線を向けているが、内心緊張で心臓がバクバクしていた。