悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「やぁユリウス」
ステラのことを考えているとこの帝国の皇太子、ロイ殿下が後ろから俺に挨拶をしてきた。
「ロイ殿下。こんにちは」
足を止め、後ろを振り向き挨拶をする。
ロイ殿下の横には約2週間前ロイ殿下の正式な婚約者となったリタ嬢もいた。
リタ嬢と俺は同じ学院の良き競争相手だ。
リタ嬢はわがままで傲慢であると同時に聡明さも持つ不思議な令嬢で、時には理解できない厄介な女、時には素晴らしいと感心してしまう女として俺は彼女に2つの印象を持っていた。
また彼女は文武両道であると有名だが、そうである為に誰よりも努力をしていたことを俺は知っていた。
だからどんなに彼女に嫌味を言われても俺は彼女のことをどうしても嫌いにはなれなかった。
「あら?私には挨拶がないのかしら」
「…失礼いたしました。リタ嬢。ロイ殿下しかいらっしゃらないと思っていたので」
「リタ嬢?違うでしょう?私はもう皇太子妃なのよ?皇太子妃と呼びなさいな?」
「…お前のような皇太子妃に礼儀なんて必要ないだろう」
「まぁ!」
こらちを印象的な猫目で睨みつけるリタ嬢に俺は小さく悪態をつく。
そんな俺を信じられないものでも見るような目でリタ嬢は見ているが、俺はあえて知らないフリをした。
今日のリタ嬢も俺が理解できない厄介なリタ嬢の方なのだろう。
彼女は嫌な部分も多いが素晴らしい姿も見せてくれるのだ。
だからこそ良き競争相手だと思っていたのにここ2週間の彼女にはそれがまるでない。