悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「気分が悪いわ。騎士として活躍しているらしいけどどうせ不正でも働いているに決まっていますわ。勉学も公爵家の力でどうにかしているのでしょう?実力では私に勝てませんものねぇ」
ロイ殿下の腕に捕まってクスクスと笑い、リタ嬢がこちらをおかしそうに見つめる。
何を言い出すのかと思えば不正だと?
共に切磋琢磨してきた仲だというのにそれを知らないとでも言うのか。
「お前の目は節穴か?人を見る目がない。お前のような人が皇太子妃だと?笑える。我が帝国の未来が危ぶまれるな」
「何ですって!?」
買い言葉に売り言葉。
俺もリタ嬢と同じように鼻でリタ嬢を笑っておかしそうにリタ嬢を見つめるとリタ嬢は顔を真っ赤にしてこちらを睨みつけた。
つまらない。いつものリタ嬢ならもう少しこちらが困ることを言ってくるのに。
これではただ俺が皇太子妃をいじめているだけではないか。
「ユ、ユリウス様だって不正ばかりして!こんな方が次期フランドル公爵とは…」
「不正などしていない。帝国が運営する学院でそんなことできる訳ないだろう。お前はそれしか言えないのか」
「…くっ」
淡々とリタ嬢の言葉を否定すればリタ嬢はいよいよその形の良い口を悔しそうに閉じた。
美しい見た目のくせに怒りで歪んだその表情のせいで全て台無しだ。
俺に何も言えなくなったリタ嬢は「ロイ様ぁ…」と泣きそうな顔でロイ殿下を見上げた。
自分から仕掛けておいてロイ殿下に助けを求めるとは何と情けない。