悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「…」
立ってみてすぐに気づいたのだが、私の足からは随分筋肉が落ちており、以前と同じようには動かせない予感がした。
これも1ヶ月も車椅子生活を強いられていた弊害だ。
さらに今まさに私はキースの万能薬による死ぬほどの痛みも味わっていたので、体力もかなり奪われてしまっていた。
今の私の置かれている状況はあまりいいものではなく、状況を打開できたとはいえない状況だ。
…それでも私は生きたい。だからこそ逃げたい。
目の前にいるリタを見て、逃げられる隙を探ってみる。
リタの一歩後ろには騎士が2人おり、あそこから逃げることはとてもじゃないが難しいだろう。
ならば答えは一つだ。
くるりとリタたちに背を向け、私は後ろへと足を出す。
後ろにいたのは私の車椅子を押さえた騎士1人だけだった。
1人だけなら逃げられる可能性も少しだけならあるかもしれない。
きっと腕くらいは掴まれるが、手刀をするなどして対応するしかない。やるしかないのだ。
騎士の次の動きを注視しながらも騎士の横を私はすり抜けようとする。
すると騎士は予想通り私をすぐに捕まえようとした。
「ウサギ狩りを始めましょう」
しかし騎士が私を捕まえようとしたタイミングで、リタがそう楽しそうに言ったので、騎士は私に触れることさえもしなかった。