悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
3.花祭りに行く
ここミラディア帝国には魔法薬に必要な材料の一つ、魔法花と呼ばれる種類の花が春から夏にかけてたくさん咲く。
魔法花の収穫、販売は我が帝国の重要な産業の一つであり、ユリウスの言っていた〝花祭り〟とはそんな魔法花の収穫を祝うお祭りのことだった。
その花祭りに私は今何故かユリウスと来ている。
「花祭りに来たことはあるのか?」
「まぁ」
人混みの中、私と離れないように私と手を繋いで歩いているユリウスを私は見上げる。
目立たないように平民の格好をしているユリウスだが、その美しい見た目に周りの視線をどこに行ってもずっと集めまくっていた。
顔もそのまま出しているのでただの平民の格好をしたユリウスである。
このユリウスの状況に街行く人たちは、あのユリウス・フランドルだと気づいて遠目からチラチラと見たり、見間違いかとわかりやすく二度見をしたりと、様々なリアクションをユリウスに向けていた。
本当に目立ちすぎだ。
「ユリウスは花祭りに来たことあるの?」
「ああ。この祭りは街の情勢を知る為にもいい機会だからな。行ける年は行けるようにしている」
「ふーん」
相変わらずの冷たい表情で私の質問に答えるユリウスに私は何となく相槌を打つ。
花祭りを楽しむよりも情勢偵察をしているとはユリウスらしい回答だ。