悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「ここ数ヶ月、18歳前後の女性の情報ばかり集めておりますが、一体誰を探しているのですか?」
「うーん。そうだねぇ…。運命の人、かな」
「…はぁ」
真剣な表情でピエールに問われたのでそれに笑顔で答えるとピエールは間の抜けた返事をして白い目で僕を見た。
…そんな目で見なくても。また僕が適当に返事をしていると思っているのだろう。
本当のことを言ったつもりなんだけどな。
「アナタが連日誰かを探しているのはもうこの帝国中に知れ渡っております。皇太子自ら大犯罪者を探しているのではないか、とか、帝国にとって重要な人物を探しているのではないか、とか。運命の人を探しています、だなんて口が裂けても言わないでくださいよ。アナタにはもうリタ嬢がいらっしゃるのですから」
「はいはい。わかっているよ。お前だから言ったんだろう」
ピエールが僕にぶつぶつと小言を言うのはいつものことだ。僕はピエールの小言を適当に聞き流して馬車の外に視線を向けた。
もうすぐ宮殿に着く。そこには今日も僕の婚約者、リタが待っているはずだ。
だが、僕は思うのだ。
おそらくあのリタは本物のリタではない。
僕の愛したリタはあんな女ではなかった。
では僕の愛したリタは一体どこへ行ってしまったのか。
その人を僕は今、探している。
何も知らないフリをして。