悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜

2.ルードヴィング伯爵の裏切り




私が代役を務めるリタ・ルードヴィングが正式にロイ・ミラディアと婚約した夜。
私は宮殿に用意されたリタの部屋で、絹のワンピースの寝巻きに身を包み、ルードヴィング家からの迎えを待っていた。

これからの手筈はメイドに扮したリタがこの部屋に訪れ、私が着ている服をリタが、リタが着ているメイド服を私が着て、入れ替わることになっている。
そしてそのまま私はメイドとしてここから出て、ルードヴィング家に帰るのだ。

そこからはもう私がリタの代役を務めることはない。
伯爵から大金と土地をいただき、めでたく8年間の契約終了だ。
私の人生を保証する契約なのでその後もお世話になることだろう。

窓を開けて宮殿の外を眺める。
夜空には三日月が浮かんでおり、その周りには無数の星が輝いている。
三日月や星たちの僅かな光を浴びる宮殿の中庭には庭師によって美しく整えられた木や花が生い茂っており、とても美しい景色だった。

この景色とも今日でお別れだ。
ロイと親しくなる為に、ロイと親しくなってもからもここにはよく通った。
だか、それも今日でおしまい。

もう見納めかと思うと何だか名残惜しくなってじっと外を眺め続けているとノックもなしに誰かが私の部屋の扉を開けた。

ルードヴィング家の者が来たのだろう。



「…え」



振り向いた先にいた予想外の人物たちの登場に思わず声を漏らす。
そこにいたのは全身黒ずくめの男が3人。
顔まで布に覆われているその姿に私はすぐに彼らが暗殺者だと気がついた。



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