悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





「ところで何でロイ様がここにいるんですか。しかも何でここで朝食まで食べているんですか」



私は朝食を食べながら次の疑問をロイにぶつける。
するとロイは優雅に堪能していたサラダを食べる手を一旦止め、私を優しく見つめた。



「まず一つ訂正しよう。これは君にとっては遅めの朝食だけど僕にとっては早めの昼食だよ」

「え」



優しく私を見つめているように見えるロイだが、よく見るとその目はどこかおかしそうに私を見ている。
私はロイの訂正に思考が一時停止した。

…えーっとつまり?
つまり?えっと?



「今は一体何時なのですか…」



ギギギっと首をぎこちなくロイの方へ向け、やっと動き出した頭で私は何とかロイにそう質問する。
嫌な予感しかしない。



「何時だと思う?」

「…」



そんな私をロイは面白そうに目を細めて見た。

本当に意地の悪い男だ。
状況をきちんと把握できず、軽くパニックになっている私をこの男は焦らして楽しんでいるのだ。それがひしひしと伝わり腹が立って仕方がない。

我慢ならずに無言でロイを睨めば「ごめんごめん」とロイは愉快そうに笑った。
もちろん言葉だけの謝罪で全く反省の気持ちなどない。



「今は午前11時くらいじゃないかな?」

「じゅ…」



11時!?

にこやかなロイからの衝撃の発言に私はそれだけ言ってまた固まる。

待って待って待って。

夕食会が始まるのは19時からだ。
現在の時刻は11時らしいので、つまり夕食会までもう8時間しかないということになる。
構成や演出など舞に必要な項目は一通り決まっているが、肝心な舞の練習は昨日ロイに邪魔されてしまったのでできてない。




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