私の世界に現れた年下くん

帰りのホームルームが終わって、急いで帰る支度をする。

「行くの?」

愛ちゃんに聞かれて、うんと頷く。

「頑張って」

「ありがとう」

愛ちゃんの応援に背中を押され、教室を出た。


高1の階に行って、名倉くんのクラスを覗いてみる。

掃除をしてる人たちがいるけど、その中に名倉くんの姿はない。

もう帰っちゃったかな。

約束はしてないから、帰っちゃったかもしれない。


「川原先輩ですか?」

どうしようと思ってたら、不意に名前を呼ばれて振り向くと、

「あ、」

見覚えのある人が私を見ていた。

名倉くんの友達で、愛ちゃんの後輩の子。
たしか牧原くん。


「もしかして名倉のこと探してますか?」

「あ、うん」

「もう帰っちゃいました。でも図書室寄ってから帰るって言ってたので、図書室にいるかもです」

「え…ほんと?ありがとう」

まるで私が来ることを分かってたみたいに、ニコッと笑う牧原くんにお礼を言って、図書室へと急ぐ。


普段走らない廊下を今日ばかりは走って辿り着いた図書室。

受付には、今日の当番の図書委員の子がいて、私を見て不思議そうな顔をした。

ペコッとお辞儀だけして、図書室の中を見て回る。

本棚の影に隠れてないか、自習スペースにいないか、隅々まで探したけど、名倉くんは見つからない。

もう用事済んで帰っちゃったかな…

落胆しながら図書室を出た私は、下駄箱へ向かうことにした。


とぼとぼと廊下を歩く。

LINEするのを躊躇ってできずにいたけど、やっぱりしとくべきだったかな。

約束してないのに、会えるわけないよね…


鞄からスマホを取り出そうとした時、廊下の先にいる人に目が止まった。
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