氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】
「じゃあ、そろそろプログラムを作るわよ」

真紀先生に言われて、まずは曲選びから始める。

「ショートは、あなたたちのスピード感とかっこよさをアピールできる曲がいいわね。なにかない?」

私と晶は、前から滑ってみたいと思っていたストラヴィンスキー作曲のバレエ音楽『火の鳥』を挙げる。
真紀先生も晴也先生も、なるほどと頷いた。

「うん、いいんじゃない? 曲が後押ししてくれそうね。フリーはどうする?」

これもふたりで決めてあった。

「フリーは『さくらのうた』でいかせてください」

私が1年半前にシングルで滑った『さくらのうた』
今度は晶と一緒に滑りたい。
ひとりで見上げたリンクの桜を、次は晶とふたりで咲かせたい。
そう思っていた。

「うん、いいと思う。海外でも日本らしい曲はアピールできるしな」

晴也先生の言葉に、海外って?と思いつつも、すんなりと希望が通って私も晶もほっとした。

先生たちが振り付けを考えてくれ、俄然練習にも力が入る。
晶とふたりで見せ場を話し合い、ここをこんなふうにしようとアイデアを出し合いながらプログラムを作っていく作業は楽しく、私はひとりよりもふたりで滑る方が何倍も楽しいと再認識していた。

(だけどそれも、相手が晶だからなんだ)

晶だから信頼できる。
晶だから共に作り上げたいものがある。
晶だから一緒に見たい風景がある。

一度は離ればなれになったからこそ、私は今こうして晶と一緒に大好きなスケートができる喜びを噛みしめていた。
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