氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】
まずはショートプログラム『火の鳥』
リフトやツイストの入りも工夫して、難しい流れから技を繰り広げる。
全ての要素を取りこぼさずにきっちり決めれば、1位のペアの基礎点を上回れるはずだった。

なのに……。
冒頭のサイド・バイ・サイドのソロジャンプ。
私と晶の最大の武器だったトリプルルッツとトリプルトウループのコンビネーションシャンプで、私の着氷が乱れる。

(どうしよう……!)

すぐに体勢を立て直したけれど、内心は真っ青だった。
シングルとは違い、ペアではどうリカバリーすればいいのかわからない。
先生たちにも、ペアはリカバリーが難しいから今は考えなくていいと言われていた。

(でもこれじゃあ、晶に迷惑がかかっちゃう)

時間も曲も止まってくれない。

「結、集中!」

晶に声をかけられてハッとした。
気持ちを切り替えて、確実にエレメンツを決めていく。

最後のスロージャンプに向かう軌道で、晶が尋ねた。

「結、ループにできるか?」

予定ではスロージャンプはトリプルサルコウだった。
ここでトリプルループが決まれば、基礎点は上がる。
これだ!と思った。

「うん! ループで」
「わかった」

後ろに流れながら一瞬で気持ちを切り替える。

「いくぞ。ワンツー、スリー!」

晶と息を合わせて、私は高くループを飛ぶ。
しっかりと回り切ってきれいに下りた。

「よし! ラスト行くぞ」
「はい!」

スピードを落とさずにステップシークエンスを駆け抜け、そのまま流れるようにデススパイラルに入る。
フィニッシュを決めると、一斉に拍手が起こった。

「ナイスリカバリー! よくやったな、結」
「ううん、晶のおかげ。ありがとう」

片膝をついたポーズから、晶が手を貸して立たせてくれる。
ふたりで観客にお辞儀をしてからリンクサイドに戻った。

「うおー、しびれたぞ、ふたりとも!」

晴也先生がバシッと晶の背中を叩く。

「もう息するのも忘れちゃったわよ。すごかった、ふたりとも鬼気迫る演技で」

真紀先生は私を抱きしめて、何度も背中をさすってくれた。

「よくやったな! 最高のペアだよ、お前たち」

晴也先生に言われて、私と晶は笑顔で見つめ合う。
そしてまた得点を気にせず4人で引き揚げてしまった。
< 79 / 83 >

この作品をシェア

pagetop