脇役だって、恋すれば
 駅のホームで海を見た時にその悩みを話してくれた出来事があったから、今思い描いた通りの仕事をしているのは本当に感動する。

 つい興奮気味になってしまい、新涼くんはまた驚いたのか目を丸くした。うるさかったかなと少し周りを気にして肩をすくめると、私を見つめる瞳が昔を懐かしむように柔らかくなっていく。

「覚えてたのか、高校の時に話したこと」
「まあ、ね」

 うぅ、しまった……また気まずくなってしまう。あの頃のことはあまり話題にしたくなかったのに、なんで自分で言っちゃうかな。

 若干後悔していると、新涼くんはどこか感慨深げに呟く。

「俺が夢を叶えて、今もこの世界でやっていけてるのは、ある人のおかげだよ」
「ある人……?」

 そんなに影響を与えた人がいるんだ。それってたぶん、新涼くんの大切な人だよね。男性でも、女性でも。知らない女性の姿を想像すると、ちくりと胸が痛む気がしたけれど、きっと気のせいだろう。

 彼はそれが誰なのかは教えてくれず、私を見下ろしてゆるりと口角を上げる。

「芦ヶ谷、さらに綺麗になったね」
「っ、え!?」

 急にそんなふうに言われて、挙動不審になる私。新涼くんはお世辞を言うタイプではないから、甘い言葉を吐かれるとどぎまぎしてしまう。

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