双子の妹は私から全てを奪う予定でいたらしい
最後に笑うのは……?
双子の妹、リリアナは小さい頃から私のものを奪うのが大好きだった。
お人形に靴、ドレスに私の好きな人。
それは数えきれないくらい。
これみよがしに、さも当然かのように奪っていく。
お父様もお母様も「姉なんだから我慢しなさい」とばかり言ってリリアナを庇う。私は自分のものをいつもリリアナにあげてばかりだった。
「見てお姉様。やっぱり私の方が似合うわ」
私が注文した新作ドレスも、さっそくリリアナが目を付けた。
どうしてこんなに違うのだろう。
私と同じ容姿なのに、リリアナははつらつとしていて笑顔が可愛い。わがままを言っても許されてしまう。
地味で本ばかり読んで、大人しい私とは正反対だった。
「お姉様、私結婚が決まりましたの。侯爵家のエリオット様ですわ」
「エリオット様って……」
絶句する私に妹は勝ち誇った笑みを浮かべる。
「そう、お姉様の婚約者でしたわよね。でもエリオット様がどうしても私が良いとおっしゃるのよ。仕方ないでしょう?」
リリアナは私と同じ顔で、キラキラとした表情を見せる。
「私の方がお姉様よりも良いって、ね」
ふふっと微笑む笑顔は、満足感で満ちていた。
あぁまた、か。
私は度重なる妹からの仕打ちに疲れていた。
もう、好きにすればいい。
幸いなのは、私がエリオット様を愛する前で良かったということだ。
「わかったわ、おめでとう」
「ごめんなさいね、お姉様」
そうしてリリアナは、最後に私から人生の伴侶となる婚約者を奪って家を出て行った。
そして、見せつける様に盛大な結婚式を挙げたのだ。
それから一年後。
「どういうことなの!」
リリアナは顔を真っ赤にして両親に怒鳴っている。
悔しくて悔しくてたまらないといった表情だ。
そうだろう。リリアナは私に勝つことが生きがいだった。
侯爵家に嫁いだ自分と、惨めな独身の姉。
それだけでも満足していたのに……。
リリアナは予想だにしなかった出来事に混乱しているようだった。
「なにを怒る? 喜ぶところではないか!」
そう言う両親は誇らしげで、嬉しそうにしている。
リリアナは肩で息をして私を睨んでいた。
そして大きく息を吸って心を落ち着かせると微笑みながら私の隣を見つめた。
「私は姉と同じ顔です。姉でも良いなら私でもよろしいでしょう。お望みならば夫とは離縁いたします。きっとあなた様にも、姉より全てが優れた私の方がふさわしいかと……!」
リリアナは私の隣に立つ婚約者に自分をアピールしだした。
これには呆れるしか無い。夫と離縁したまで私から奪おうというのか。
しかし、私の隣に立つ婚約者は愛おし気に私を見下ろした。
「同じ顔でも、俺はマリアンナの優しい心根に引かれた。俺はマリアンナを愛しているのだ。人のものを欲しがり奪うような君ではなくて……ね」
見目美しい私の婚約者にそう言われて、言葉をなくすリリアナ。
「リリアナ、陛下の前で頭が高いのではなくて?」
私が静かにそう言うと、さらに顔を真っ青にした。
「妹よ。私は陛下のため国民のために王妃として尽力していくわ。立場が違うから滅多に会うことはなくなるけれど……元気でね」
私がそう言って微笑むと、リリアナは膝から崩れ落ちた。
そう。私はこの国の国王陛下に見初められ結婚する。
これから王妃となるのだ。
私はリリアナの前にしゃがみ、耳元でこう囁いた。
「まだ頭が高いわ。私を誰だと思っているの?」
「マ、マリアンナ……」
「口の利き方には気を付けなさい。そして、これからは私のことは王妃様と呼ぶように。いいわね?」
青い顔で言葉をなくすリリアナに、私は心の中でざまぁみろと笑った。
これで私はもう二度と何かを奪われることはない。
リリアナが私から奪えるものなど何一つないのだ。
END
お人形に靴、ドレスに私の好きな人。
それは数えきれないくらい。
これみよがしに、さも当然かのように奪っていく。
お父様もお母様も「姉なんだから我慢しなさい」とばかり言ってリリアナを庇う。私は自分のものをいつもリリアナにあげてばかりだった。
「見てお姉様。やっぱり私の方が似合うわ」
私が注文した新作ドレスも、さっそくリリアナが目を付けた。
どうしてこんなに違うのだろう。
私と同じ容姿なのに、リリアナははつらつとしていて笑顔が可愛い。わがままを言っても許されてしまう。
地味で本ばかり読んで、大人しい私とは正反対だった。
「お姉様、私結婚が決まりましたの。侯爵家のエリオット様ですわ」
「エリオット様って……」
絶句する私に妹は勝ち誇った笑みを浮かべる。
「そう、お姉様の婚約者でしたわよね。でもエリオット様がどうしても私が良いとおっしゃるのよ。仕方ないでしょう?」
リリアナは私と同じ顔で、キラキラとした表情を見せる。
「私の方がお姉様よりも良いって、ね」
ふふっと微笑む笑顔は、満足感で満ちていた。
あぁまた、か。
私は度重なる妹からの仕打ちに疲れていた。
もう、好きにすればいい。
幸いなのは、私がエリオット様を愛する前で良かったということだ。
「わかったわ、おめでとう」
「ごめんなさいね、お姉様」
そうしてリリアナは、最後に私から人生の伴侶となる婚約者を奪って家を出て行った。
そして、見せつける様に盛大な結婚式を挙げたのだ。
それから一年後。
「どういうことなの!」
リリアナは顔を真っ赤にして両親に怒鳴っている。
悔しくて悔しくてたまらないといった表情だ。
そうだろう。リリアナは私に勝つことが生きがいだった。
侯爵家に嫁いだ自分と、惨めな独身の姉。
それだけでも満足していたのに……。
リリアナは予想だにしなかった出来事に混乱しているようだった。
「なにを怒る? 喜ぶところではないか!」
そう言う両親は誇らしげで、嬉しそうにしている。
リリアナは肩で息をして私を睨んでいた。
そして大きく息を吸って心を落ち着かせると微笑みながら私の隣を見つめた。
「私は姉と同じ顔です。姉でも良いなら私でもよろしいでしょう。お望みならば夫とは離縁いたします。きっとあなた様にも、姉より全てが優れた私の方がふさわしいかと……!」
リリアナは私の隣に立つ婚約者に自分をアピールしだした。
これには呆れるしか無い。夫と離縁したまで私から奪おうというのか。
しかし、私の隣に立つ婚約者は愛おし気に私を見下ろした。
「同じ顔でも、俺はマリアンナの優しい心根に引かれた。俺はマリアンナを愛しているのだ。人のものを欲しがり奪うような君ではなくて……ね」
見目美しい私の婚約者にそう言われて、言葉をなくすリリアナ。
「リリアナ、陛下の前で頭が高いのではなくて?」
私が静かにそう言うと、さらに顔を真っ青にした。
「妹よ。私は陛下のため国民のために王妃として尽力していくわ。立場が違うから滅多に会うことはなくなるけれど……元気でね」
私がそう言って微笑むと、リリアナは膝から崩れ落ちた。
そう。私はこの国の国王陛下に見初められ結婚する。
これから王妃となるのだ。
私はリリアナの前にしゃがみ、耳元でこう囁いた。
「まだ頭が高いわ。私を誰だと思っているの?」
「マ、マリアンナ……」
「口の利き方には気を付けなさい。そして、これからは私のことは王妃様と呼ぶように。いいわね?」
青い顔で言葉をなくすリリアナに、私は心の中でざまぁみろと笑った。
これで私はもう二度と何かを奪われることはない。
リリアナが私から奪えるものなど何一つないのだ。
END


