一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「落ち着いた?」
関宮先輩は文句の一つも言わずに私を抱き上げ、リビングの中央に置かれたソファに座らせてくれた。
差し出されたばかりのティーカップに注がれた紅茶へ息を吹きかけて冷ましていた私に向ける彼の声は、どこまでも甘く優しい。
「取り乱してしまって……。申し訳、ございません……」
「ううん。俺は気にしてない」
「ですが」
「心が苦しいって、悲鳴を上げているんだから。悲しい時は、我慢しちゃ駄目だよ」
彼は私を、高校時代から注意深く観察しているせいだろう。
言いたいことを言えずに自分の中だけで解決する癖を見抜いているからこそ、こうしてもっと自分の意志を吐き出すべきだとアドバイスをしてくれるのだ。
それがありがたくもありーー恐ろしくもある。
「……何も、聞かないんですね」
「俺は星奈さんを、泣かせたいわけじゃないから」
彼は妹をどう思っているかについて問いかけたら、やっと止まった涙が再び瞳から零れ落ちてしまうのではと心配しているようだ。
――大丈夫。もう泣かない。