一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
 ティーカップの取っ手ををぎゅっと強い力で握りしめた指先が、小刻みに震えていることに見ないふりをしながら。

 彼の前では本音を隠さず打ち明けると覚悟を決めた私は、か細い声で言葉を紡ぐ。

「私は、聞いてほしいです……」

 関宮先輩は目を見張り、私を不安そうに見つめている。

 今まで自分の置かれている境遇や感じている思いを、絶対に告げなかった。
 そんな私が自ら打ち明けたいと口にするなど、あり得ない。そんな顔だ。

「気分のいい話では、ないので……。関宮先輩が、嫌なら……」
「うんん。教えてほしい。苦しくなったら、いつでもやめていいよ」

 こんなに私の心を労ってくれる人は、世界中のどこを探しても関宮先輩しかいないのに。
 どうして長い間、遠ざけていたのだろう。

 自分でも疑問に思った私は罪滅ぼしのような気持ちを懐きながら、あの子をどう思っているかについてを考える。

 自分こそが世界で一番幸せなお姫様になる存在なのだと、全身で言い表すその仕草が。
 異性を虜にするその可憐な容姿が。
 搾取するためだけに近づいてくるその態度が。
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