一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む

「ごちそうさま。今度は陽日ちゃんの作ったカツサンド、食べさせてね」
「もちろんですぅ。ありがとうございましたー！」

　彼女は営業スマイルを浮かべて常連客を送り出し、厨房へ戻ってくる。その表情は、般若のようだ。
　こちらを冷たい瞳で見下した陽日さんは、私に大声で吐き捨てる。

「辞めたいなら、好きにしなよ。あたしは一人で、この店を切り盛りしてやる。あたしを捨てたこと、後悔させてやるんだから！」
「は、陽日、さん……？」

　彼女は戸惑う私の様子など気にする素振りすら見せず。
　棚の上に置いてあった油の瓶を手に取り、蓋を開けて鍋の中に勢いよく注ぎ込む。

「一体、何を……」
「カツサンドを一人で作れるってとこ！　証明してあげる！」

　自信満々に私へ宣言をした彼女は鍋に火をつけると、油を温めている間にキャベツの千切りを始めた。

「これを、こうやって……！」

　食材を冷蔵庫から取り出し刃物を手に持ったまではいいが……。
　料理をほとんどしたことのない彼女の姿は危なっかしくて、仕方ない。
　とてもじゃないが、放っておけなかった。