オタ友ができました。
1 ユーザーネーム・蘭
私の神様は、鈴さんという。
やってきたー! 待ちに待った高一の夏休み! 私はこの夏を、あることに費やすことを今年が始まった頃から決めていた。
大学受験はまだ先。
東大なんかを受ける頭じゃないから、高一の夏休みは課題くらいしか追われるものはない。
両親も勉強はほどほどにできていればいい、というスタンスなので、赤点なんかをとらなければ文句は言われない。
というか、夏休みをひたすらコレにつぎ込むために、学年で中の上くらいはキープしていた。
夏休み明けの試験が怖いけど……また盛り返して見せる! すべてはケータイ小説を読むために!
そう。私が夏休みまるまる使ってやりたいのは、ケータイ小説を読み漁ること。
中三のはじめ頃、私は部活で足を骨折して入院していた。
選手に戻ることは難しくなって病院のベッドで鬱々と毎日を過ごしていた私に現れた神様が、ケータイ小説だ。
お見舞いに来た従姉のお姉ちゃんが差し入れてくれた、ケータイ小説がもとになった文庫本。
あまり小説は読まないで来たけど、せっかくもらったものだから読まないのももったいないとページを開くと、すぐに魅了された。
純粋で瑞々しい文体。リアルな心情。現実にありそうと思ってしまう恋愛ものから、ファンタジーものまで、お姉ちゃんが差し入れてくれた三冊は、一日で読み切ってしまった。
新しい本を買いに行きたいと思っても、そのときの私はリハビリも始まっていない状態だった。
そしてカバー裏のケータイ小説サイトの紹介ページを目にして、即登録した。ユーザネームは悩んだけど、あとからも変えられるみたいだったから名前からとって『蘭』にした。
それから私の毎日は一変した。悶々と、何が悪かったの、私はもうコートに戻れないの、と哀しい思いの沼に自ら足を突っ込んでたゆたっていた日々から、一秒ごとに新しいお話を受け取れて、それがすごく楽しみな毎日に。
リハビリもきつかったけど頑張れた。
これが終わったらケータイ小説読むんだ~! と意気込んで。
退院が決まる頃には、部活への未練がなくなっていた。
退部してもよかったんだけど、顧問と部長から、マネージャーとして残ってくれないかと言われて、それを請けた。
マネージャーはマネージャーで楽しかった。
割とサポートという立場も好きなことに気づけたんだ。
中三ゆえの悩み、受験もケータイ小説をご褒美に乗り越えた。
すきなものができた私はもはや無敵だった。
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