このヒカリの下を、もう一度君と

暗いはずなのに、
男が気持ち悪い顔で笑ったのが分かった。

刃物がキラリと光っていて、
私は恐怖と絶望で何も言えずに冷たくなったお姉ちゃんにしがみつくしか出来なかった。

「そういや妹がいるとか言ってたな……」

ブツブツと言いながらゆっくりとこっちに向かってくる男。

私も死ぬんだと思った。
お姉ちゃんみたいに、血を流して冷たくなるんだ。

嫌だ、嫌だよ、
私、まだ死にたくないよ……!

「涼太……」

口から涼太の名前がこぼれた。

涼太、涼太、涼太、

助けて、涼太……!

「ま、あの世で姉ちゃんと仲良くしな」

そう言ってニヤリと笑って男は刃物を振り上げた。

殺される!
そう思った瞬間、
私は叫び声を上げた。

「涼太ー!!」

「陽奈!?」

私が涼太の名前を叫んだ瞬間、涼太がリビングに飛び込んできた。

「何だよ、これ……」

「涼太……」

涼太の姿に一瞬、安心した。
だけど、この異様な光景に涼太は唖然としたような、
苦しそうな顔をした。

「あ?誰だお前……」

男は今度は涼太を睨みつけた。

「優奈、姉……?」

涼太が、私がしがみついている優奈姉を見る。

「優奈姉、なの……?
え、優奈姉……、な、何で……」

「何だよ、弟もいるとか聞いてねぇんだけど」

震える涼太を見てもニヤニヤと気味の悪い顔のままの男は刃物を私から涼太に向けた。

「まあどうでもいいや、お前も死んどけ」

そう言って涼太に刃物を振り上げる。

「涼太!」

「お前が!
優奈姉を……!」

刃物を振り上げる男に、涼太は苦しみや憎悪を一身に纏いながら身体ごと思いっきりぶつかっていった。

男には予想外の行動だったのだろう、
油断もしていたのだろう、
男は思いっきり尻もちをつく形で倒れた。

「いってぇ!
このガキ……!」

「お前が、優奈姉をあんなにしたのか……!?」

小さく低く、だけど奥底から響くようにそう呟いた涼太は、さっきまで男が持っていた刃物を自分の手に握っていた。

「あ?
何だよガキが。
そうだよ、俺が女も親も殺したんだよ!
こいつが俺を振るからな!」

そう言って笑う男に吐き気がする。
そんな理由で、お姉ちゃんは殺されたの?
パパもママも?

許せない……、
殺してやりたい。

そう思ったのは、私だけじゃなかった。

だって、
涼太は優奈姉が好きなんだから。

「ふざけんな……!
優奈姉を、優奈姉を……!」

涙を流しているのが分かった。
涼太の涙なんて、
小さい頃に怒られた時にしか見ていない。

「死ねよ!
お前なんか!」

「涼……!」

私の声は、
涼太の悲痛な叫び声と男のうめき声にかき消された。

次に私の目に映るのは、
赤黒い血を流し倒れている男と、
赤く染まった手をしている涼太だった。











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