このヒカリの下を、もう一度君と

今でも夢に見る。
今でもリアルに思い出せる、思い出してしまう。

ドアを開けた瞬間に鼻についた、錆びたようなそれでいて生臭いような匂い。
昼間だというのにカーテンを全て閉め切っていて暗い家の中。

ただ事じゃない事は分かるのに、
まだ小学生だった幼い私は大人を呼びにいく事も思いつかずリビングのドアを開けた。

その瞬間、強くなった匂い、
そして目の前に広がる赤黒い液体。

『パパ、ママ……?』

いるはずの両親を呼ぶが返事はない。

電気をつけずに足を踏み出した私の足は、何かに滑って転んだ。

転倒した私は床に身体を打ちつける事はなかった。

冷たくて、固い何かが身体の下にあったから。

カーテンの隙間から僅かに漏れる光が私の身体の下にある【もの】を照らした。

【それ】が何なのか、理解した瞬間、
私は声にならない声が喉の奥に詰まっていくのを感じた。

叫びたいのに叫べない、
動きたいのに動けない、
ただ、私の下にいた、
血にまみれたお姉ちゃんにしがみつくしか出来なかった。

いつも優しくて明るくて、太陽みたいなお姉ちゃんは、
冷たく固く、暗くなっていた。


この日から、
私と涼太の人生は変わった。




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