桜が散る今日のピンクムーン
ピンクムーン
「ねぇ、今日はピンクムーンなんだって」

俺の親友の桜はベランダに寄りかかって、夜空を見上げながらそう言った。

桜とは高校生頃から仲が良くて、こうして家に来るときも少なくない。

「え?でも全然ピンクじゃなくね?」

今日は桜に夜空を見ようと誘われていた。

ピンクムーンという満月らしいけど、至って普通の満月にしか見えない。

「そうだけど、ピンクムーンっていう名前なの」

「へぇー」

後で調べてみたけど、ピンクムーンの名前は「ピンクの花が咲く頃」という意味で付けられたらしい。

桜は風に長い黒髪を揺らされ、ぼーっとしながら夜空を見つめている。

「ていうかさ、春って好きな人とか居ないの?」

桜がこちらを向いてきた。好きな人かぁ。

「いや、全く居ねー」

いきなりだな、と思いつつ、本当のことを答えた。

そもそも人にそこまで興味がないから、人を好きになることもない。

「ふーん」

ここ最近、桜は何故か落ち込んでいるようだった。

冷たいというか、ポーカーフェイスなのはいつものこと。でも、最近はどこか浮かない顔をしている。

え、もしかして。

「桜は?」

「えー?居るけど」

やっぱり。こいつ、絶対恋愛のことで悩んでやがる。親友だからすぐ分かる。

「へぇー」

てか、桜って、好きなやつ居たんだな。

...は、なにこの感情。まぁいいや。
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