敏腕編集者の愛が重すぎて執筆どころじゃありません!~干物女な小説家は容赦なく激愛される~
隣に座っていた朗らかなおばあちゃんたちも、パチパチと拍手してくれる。

「おめでとう。こりゃあお団子の御利益かしらね」

「未来の文豪様の誕生ね」

そんな形で、家族にも友だちにも内緒でこっそり書き溜めていた小説が栄誉ある賞をもらい、現役学生作家となった。

そこから、私の人生はがらりと変わった。授賞式に出席してスピーチをして、雑誌のインタビューを受けて、受賞作の書籍化の準備をしながら新作の打ち合わせをして。

以降、作家としての契約、仕事と学業のスケジュール管理、就労のための事務手続きなど、あらゆる世話をしてくれたのが、私の担当になった吉川さんだった。

「みどり先生。洋服のサイズを教えてくれますか? 今度の取材で着ていく服を用意しておきますんで」

彼女は私より一回り年上。面倒見のよいお姉さん、というかもはやお母さん。実母が遠くにいて頼れない反動もあったと思う。

「取材って、スーツじゃダメなんですか?」

「広報がお洒落な美人作家として売り出したいって張り切っちゃってて」

「え。私、美人じゃないのに?」

「そこはヘアメイクでカバーしますから」

< 25 / 188 >

この作品をシェア

pagetop