いつも君のとなりで

それからお昼休憩の時間になると、また周りがざわつき始める。

そのざわつきでわたしは糸師くんが来たのだと気付き、ふと事務所入口の方に視線を向けると、やはりそこに糸師くんが姿を現し、「松雪主任、お疲れ様です。休憩行けますか?」と声を掛けてきた。

「あ、今行く。ちょっと待ってて。」
「急がなくても大丈夫ですよ。待ってますから。」

糸師くんは周りの女性社員たちからの視線やざわつきを気にする様子もなく、いつもの落ち着いた雰囲気のままわたしを待ってくれていた。

すると、そんな糸師くんを見た広人が「あれが営業一課の糸師?」と驚いた様子で花村さんに声を掛けていて、花村さんは「糸師さんって、あんなイケメンでしたっけ?」と言い、その言葉に嫉妬したのか広人は花村さんを細めた目で見つめ、花村さんは「やだぁ!広人さんが一番ですよ?」と機嫌取りをしていた。

そして、出掛けられる準備が整ったわたしはデスクから立ち上がり、入口で待つ糸師くんの元へ歩み寄った。

「お待たせ。」
「じゃあ、行きましょうか。」

そう言って、周りからの注目を浴びながら、わたしたちはエレベーターを待ち、一階まで下りると外へと出た。

「今日の天気は気持ちがいいですね。」

糸師くんが雲一つない青空を見上げて言う。

「そうだね。それより、糸師くん。凄いね、最初誰か分からなかったよ。」
「ちょっと雰囲気変えてみたんですけど、どうですか?」
「凄くいいと思う!これから大変だよ〜?周りの女性社員、皆が糸師くんに釘付けになってるもん。」

わたしがそう言うと、糸師くんは微かに口角を上げ「他の人はどうでもいいんですよ。松雪主任に"良い"って思ってもらえれば。」と言った。

え、わたしに?
まぁ、そっか、、、広人への仕返しの為にしてくれてるんだもんね。

勝手な理由でフッても、わたしは寂しがってないって思わせてやる。

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