いつも君のとなりで

わたしは午後の業務で退職予定である営業二課の島田くんの勤怠にエラーがないか確認を終え、それからお手洗いに行く為にデスクを離れた。

お手洗いの後に資料保管室に行って、保管してある島田くんの履歴書探そう。

そう思い、お手洗いに入り済ませて手を洗おうとした時だった。

お手洗いの入口を塞ぐように花村さんが立っていたのだ。

わたしは「お疲れ様。」とだけ声を掛け、手を洗おうとした。

すると花村さんはコツコツとパンプスを鳴らせながらこちらに近付いて来て、わたしの横に立ち、「松雪主任って、年下好きなんですか?」と言ってきた。

「何で?」
「だって、営業一課の糸師さんと仲良くしてるじゃないですかぁ。糸師さんって、あんなにイケメンだったんですね。わたし、狙っちゃおうかなぁ。」

花村さんがそう言うので、わたしは手を洗いながら「花村さんは、田岡チーフと仲良くしてるんじゃないの?」と言った。

「あれ?嫉妬してます?田岡チーフって、総務課の中では一番かっこいいと思ったので、ちょっと甘えてみたんですけど、イチコロでしたよ?松雪主任とあまり上手くいってなかったので、癒しが欲しかったみたいです。」
「やっぱり知ってたんだね。わたしたちが付き合ってたの。」
「はい。偶然、外で一緒に居るところを見掛けたことがあったので。」

わたしは手を洗い終えると、ペーパータオルで手を拭き、それをダストボックスに捨てた。

「松雪主任ってズルいですよね。主任とゆう立場があって、皆から慕われてて、上の人たちからの評価も高くて、おまけに彼氏までいる。わたし、そうゆう人を見ると、奪いたくなっちゃうんです。その人の大切なもの。」

悪気もなく上から目線で話してくる花村さん。

わたしは「随分、"イイ性格"してるのね。」と冷静に言った。

「ありがとうございます!だから、次は、、、糸師さんを狙わせてもらいますね。」
「田岡チーフは、どうするの?」
「んー、、、田岡チーフは、キープですかね。わたし、糸師さんの方がタイプなんですよねぇ。わたしと糸師さんの方が歳近いし。松雪主任って30ですよね?おばさんより、わたしの方が糸師さんと釣り合ってると思いません?」

花村さんは、わたしを苛つかせようとしてるのか、次々と毒を吐いてくるが、わたしは不思議と苛立ちはしなかった。

< 14 / 53 >

この作品をシェア

pagetop