勇気の歌(Summerloveの前の話)
「どうして………僕にこんな事するの?」
「決まってるだろ?お前が集団を掻き乱してるクズ極まりないからだ」
「ぼ……、僕はクズじゃない!!」
「早羽に、子作り成功だとかほざいたお前が?」
早羽は俯いて、絶妙な顔をしてる。
それは嫁さんのことを屈辱されたような気持ちを思い返したからだろう。
「修先生に対しては、敵対心丸出しで対応してたお前が?」
耐えられなくなって、空を仰ぐ俺。
辞めてくれ。
今それを言われるとーーー俺は本当に勇気を殺してしまうかもしれない。
「そんでもって、松阪に対しても悪口ばかりたたいていた事を周りがうんざりしていた事を知らないのか?」
俺と、早羽は無意識に松阪を見る。
俯いてはいたが、顔に影がかかって。
怒っているようにも見えた。
それは今まで見たことがないような、彼の顔。
「なぁ、チャンスをやるよ。そうだな………松阪?お前なんてどうだ?」
「……なんで僕なの?」
「一番教師いじめってやつを受けていたから」
松阪は一歩踏み出す。
「馬鹿なことせんといてぇーな!!!」
「これは、僕と勇気くんの問題だよ」
振り向くことなく、呟いた松阪。
その姿は何処か神々しく見えて。
あの時が全盛期だったのかもしれないと、感じることがあって。
ビビり散らかした、勇気が身を縮こませた。
そんな姿を見せる彼を、ぶん殴ってしまいたいと思ったのは、性格が悪いから。
でも…、教師だ。
そんなことはいけないとはわかっているもーーー。
「教師って、結局は人間なんだよ?勇気?知ってた?お前の頭じゃわかんねぇーかも知んねぇーけど、何でもしていいわけじゃない」
雪は2階からまた、何かを投げつけた。
それは粘膜を纏った、茶色のーーー。
ーーガソリン………!?!
気付いた瞬間には、もう全身に勇気は被っていて。
またもや、2度目の悲鳴と爆笑の渦に包まれた。