勇気の歌(Summerloveの前の話)
暫くどよめきが訪れた。
それだけ勇気は嫌われていて、何なら本当に松阪は勇気を殺すだろうと直感的に誰もが思ったから。
絶対的王者は顔を顰めた。
面白くないと言わんばかりに。
「僕は………僕は君を、許したつもりはないよ。でも………君が困っているのは、事実なんだよね?」
腫れた右頬を押さえながら、顔を伏せた勇気。
「僕は………僕はどんな事があっても、生徒を見捨てないって決めてるんだ。僕も同じような目に遭ったことがあるから。だから、ーーー僕は彼を殺さない!!」
雪を睨みつけて、正面を向く松阪。
周りの取り巻きが、戸惑っていると雪は笑った。
「その言葉………本当なんだろうな?」
「本当だよ。嘘じゃない」
「じゃあ、試してやるから覚悟しておけ」
軽い笑みを浮かべながら、何処かへ去っていく雪。
何だかーーー嫌な予感がする。
「君達生徒諸君、何をしている。もう見物は終わりだ。帰りたまえ」
騒然としている会場の中、仕切るように出てきた校長。
ーーー今まで、何もせずに見ていた癖に………。
さすがの生徒達も、校長に言われてしまえばまずいと思ったのか、続々とそれぞれの場所に戻ってゆく。
「君は、彼の様に行動できていたのかな?」
早羽に引かれながら、去る最中。
耳元で校長に囁かれた。
できるわけない。
総直感で思い知らされた事も、校長の策略なんだろうか。
*