アフターアーダン 闇堕ち英雄の後日譚
ジークとフリート
「違和感があったんだ。それは俺の件ではない違うところでな。
銅像の件とかは誤りであるから違和感よりも不思議さが勝るが、もっと違う変なもの。
それはフリート様の銅像が無いどころかその痕跡がどこにもなかったことだ」
俺は公園にそびえ立つ勇者ジークの銅像を見上げながら言った。
これよりかはもう少し小さかったよな、と実際の大きさを思い出しながら見るも苦笑いする。
多くの人はもしかしたらこれはかなり誇張された銅像のサイズだと思っているかもしれないが、案外のところかなり近いものがあると。
もしくは実際に会って感動した自分の印象によって、勇者ジークの大きさについて大きくなっている点もあっただろう。
見上げるほどの偉大なる人に出会えた稀有な体験、幸福のひと時。
「ここはあの時の解放軍のテントがあった場所なんだよな?」
「そうですよ。グラン・ベルンから世界解放へのスタート地点として歴史的な場所でして、このように中央に勇者ジークの銅像があり観光地となっております」
ラムザが楽し気に言うのを聞きながら俺はアルマを見る。
その不貞腐れたような疑心暗鬼な表情から目を離さずに俺は言った。
「この場にジーク様の銅像があるのならフリート様のもあってしかるべきだ。
あの方々は二人で一人といっても過言ではないのだからな」
「それ本当なの?」
「だから俺は嘘を吐いていないと」
俺達の間にラムザが挟まりそれから言った
「公式的な歴史をご説明いたしますね。グラン・ベルン第一王子であるフリートは魔王と手を組んだもの、つまりは世界の裏切り者です」
俺が言葉を失い震えるとアルマが肩に触れてきた。
「待って、落ち着いて。まずラムザの話を全部聞いてから、喋って」
俺はその手が誰か……オヴェリアのようなものだと感じ二重に驚きながら小さく頷きそれから座る。
「第一次聖戦とはフリートが魔王と手を組みがグラン・ベルンを滅ぼし支配したところから始まります。
なぜ祖国を滅ぼしたのかについての理由はフリートのその卑小さ故です。
第一王子であるも彼は才覚が振るわぬ無能どころか邪悪で呪われていたために王により辺境に追放されてしまいました。
その代わりに後継者に選ばれたのがジークであり、フリートはそのことを恨んでいたのです。本当は自分であったのにと。
そして彼は魔王のグラン・ベルン攻勢の手助けをし制圧後は自らが王であると振る舞いますが、こちらこそ真の王である勇者ジークの前に敗れ去り逃走、とこれが第一次聖戦時におけるここの出来事です。
いかがでしたか?」
「……なにから、質問していいか分からないな」
俺の声に二人は黙るも肩に触れたままのアルマの掌は熱を出し力が加わり、それから押しつけてくる。
「誰かが嘘を吐いていると、言いたいわけ?」
「痛いっておい。嘘……は吐いているだろうが、こうしないといけない理由があるはずだ。
こんな大きな変更は勘違いや思いつきでやるはずもない。明白な意思とか」
「政治的な理由、となりますね。うむ、なるほど」
ラムザがしばし考え込み、それから言った。
「もしもフリートがヤヲさんの言われるような御方でしたら、ひとつ現代において問題が生まれますね。
おっと周りに人はいませんよね? 聞こえたら一大事ですから……よし、では続けます。
それはずばり……フリートは真の王位継承者であり、ジーク様はむしろ逆に……」
「ラムザ、そこまで!」
アルマが叫ぶとラムザは口をつぐんだ。
周りに人がいなくても言ってはならぬこと、これはつまりそういうところで。
「しかしフリート様はジーク様に王位を譲るつもりであったからようだから、このような話に作り変えなくとも」
ラムザが首を振る。
「その継承が出来なかったのが第一次聖戦の結末でしたよね? 勇者ジークは敗れて散りフリートは生き残った」
「すると……第一次聖戦後のフリート様は魔王側に着いたのか?」
「そうよ! ここはね、ここからはね、あんたがどう言おうが関係なく」
「意識が無かったからな」
「その点もあるけど黙って聞いて。そう、あんたの記憶と関係なく大悪党フリートが躍動するわけよ。
あいつは勇者ジーク亡きあとに復興途中のグラン・ベルンに舞い戻り、混乱を巻き起こしどさくさに紛れてそこで再び王を僭称するわけよ」
「いや、もともと王位継承者だから元の鞘に収まっただけでは?」
「うっうるさい茶々をいれないでよ! 次がすごいんだからちゃんと聴いて!
僭称王フリートは全世界に先んじて対魔王戦争に対して、中立宣言からの魔王側に着くという決定を下したのよ!」
「なん、だと?」
驚く俺をアルマが見下ろす。
そのご満悦で眩しい笑顔、その邪まな太陽が暗黒色の光でもって俺を照らした。
「これで劣勢ながらも対魔王戦争を行っていた各国は相次いで降伏と、勇者ジーク亡きあとの第一次聖戦はグラン・ベルンの寝返りによって幕を閉じたとも言われるのよ。
復興途中であるも一大勢力のグラン・ベルンがもしも対魔王戦に味方として参戦していれば魔王を打倒できたかもしれない、これが第一次聖戦の総括であり、これをもって大悪党フリートが誕生したってわけ。
どう? ご感想をお待ちしています」
俺は微笑むアルマを見てからラムザは見ると、
こちらは口は閉じているが目が笑っていた。
いや、笑っているというか歪んでいる。
それは好奇心によるものか?
しかし俺は笑えない。思うことはフリート様のことであり、あの最初の挨拶であった。
あの人が裏切る者?
国と世界を想ったあの人が世界を裏切った?
自分の知っている彼と自分の知らない彼。
よく知る全き義人である彼とまるで知らない全き悪人である彼。
同時にその二つを思うと俺の想像の中でのその二人が寸分の狂いもなく、そう、奇妙に、重なった。
「フリート様はグラン・ベルンを守りたかったかもしれないな」
銅像の件とかは誤りであるから違和感よりも不思議さが勝るが、もっと違う変なもの。
それはフリート様の銅像が無いどころかその痕跡がどこにもなかったことだ」
俺は公園にそびえ立つ勇者ジークの銅像を見上げながら言った。
これよりかはもう少し小さかったよな、と実際の大きさを思い出しながら見るも苦笑いする。
多くの人はもしかしたらこれはかなり誇張された銅像のサイズだと思っているかもしれないが、案外のところかなり近いものがあると。
もしくは実際に会って感動した自分の印象によって、勇者ジークの大きさについて大きくなっている点もあっただろう。
見上げるほどの偉大なる人に出会えた稀有な体験、幸福のひと時。
「ここはあの時の解放軍のテントがあった場所なんだよな?」
「そうですよ。グラン・ベルンから世界解放へのスタート地点として歴史的な場所でして、このように中央に勇者ジークの銅像があり観光地となっております」
ラムザが楽し気に言うのを聞きながら俺はアルマを見る。
その不貞腐れたような疑心暗鬼な表情から目を離さずに俺は言った。
「この場にジーク様の銅像があるのならフリート様のもあってしかるべきだ。
あの方々は二人で一人といっても過言ではないのだからな」
「それ本当なの?」
「だから俺は嘘を吐いていないと」
俺達の間にラムザが挟まりそれから言った
「公式的な歴史をご説明いたしますね。グラン・ベルン第一王子であるフリートは魔王と手を組んだもの、つまりは世界の裏切り者です」
俺が言葉を失い震えるとアルマが肩に触れてきた。
「待って、落ち着いて。まずラムザの話を全部聞いてから、喋って」
俺はその手が誰か……オヴェリアのようなものだと感じ二重に驚きながら小さく頷きそれから座る。
「第一次聖戦とはフリートが魔王と手を組みがグラン・ベルンを滅ぼし支配したところから始まります。
なぜ祖国を滅ぼしたのかについての理由はフリートのその卑小さ故です。
第一王子であるも彼は才覚が振るわぬ無能どころか邪悪で呪われていたために王により辺境に追放されてしまいました。
その代わりに後継者に選ばれたのがジークであり、フリートはそのことを恨んでいたのです。本当は自分であったのにと。
そして彼は魔王のグラン・ベルン攻勢の手助けをし制圧後は自らが王であると振る舞いますが、こちらこそ真の王である勇者ジークの前に敗れ去り逃走、とこれが第一次聖戦時におけるここの出来事です。
いかがでしたか?」
「……なにから、質問していいか分からないな」
俺の声に二人は黙るも肩に触れたままのアルマの掌は熱を出し力が加わり、それから押しつけてくる。
「誰かが嘘を吐いていると、言いたいわけ?」
「痛いっておい。嘘……は吐いているだろうが、こうしないといけない理由があるはずだ。
こんな大きな変更は勘違いや思いつきでやるはずもない。明白な意思とか」
「政治的な理由、となりますね。うむ、なるほど」
ラムザがしばし考え込み、それから言った。
「もしもフリートがヤヲさんの言われるような御方でしたら、ひとつ現代において問題が生まれますね。
おっと周りに人はいませんよね? 聞こえたら一大事ですから……よし、では続けます。
それはずばり……フリートは真の王位継承者であり、ジーク様はむしろ逆に……」
「ラムザ、そこまで!」
アルマが叫ぶとラムザは口をつぐんだ。
周りに人がいなくても言ってはならぬこと、これはつまりそういうところで。
「しかしフリート様はジーク様に王位を譲るつもりであったからようだから、このような話に作り変えなくとも」
ラムザが首を振る。
「その継承が出来なかったのが第一次聖戦の結末でしたよね? 勇者ジークは敗れて散りフリートは生き残った」
「すると……第一次聖戦後のフリート様は魔王側に着いたのか?」
「そうよ! ここはね、ここからはね、あんたがどう言おうが関係なく」
「意識が無かったからな」
「その点もあるけど黙って聞いて。そう、あんたの記憶と関係なく大悪党フリートが躍動するわけよ。
あいつは勇者ジーク亡きあとに復興途中のグラン・ベルンに舞い戻り、混乱を巻き起こしどさくさに紛れてそこで再び王を僭称するわけよ」
「いや、もともと王位継承者だから元の鞘に収まっただけでは?」
「うっうるさい茶々をいれないでよ! 次がすごいんだからちゃんと聴いて!
僭称王フリートは全世界に先んじて対魔王戦争に対して、中立宣言からの魔王側に着くという決定を下したのよ!」
「なん、だと?」
驚く俺をアルマが見下ろす。
そのご満悦で眩しい笑顔、その邪まな太陽が暗黒色の光でもって俺を照らした。
「これで劣勢ながらも対魔王戦争を行っていた各国は相次いで降伏と、勇者ジーク亡きあとの第一次聖戦はグラン・ベルンの寝返りによって幕を閉じたとも言われるのよ。
復興途中であるも一大勢力のグラン・ベルンがもしも対魔王戦に味方として参戦していれば魔王を打倒できたかもしれない、これが第一次聖戦の総括であり、これをもって大悪党フリートが誕生したってわけ。
どう? ご感想をお待ちしています」
俺は微笑むアルマを見てからラムザは見ると、
こちらは口は閉じているが目が笑っていた。
いや、笑っているというか歪んでいる。
それは好奇心によるものか?
しかし俺は笑えない。思うことはフリート様のことであり、あの最初の挨拶であった。
あの人が裏切る者?
国と世界を想ったあの人が世界を裏切った?
自分の知っている彼と自分の知らない彼。
よく知る全き義人である彼とまるで知らない全き悪人である彼。
同時にその二つを思うと俺の想像の中でのその二人が寸分の狂いもなく、そう、奇妙に、重なった。
「フリート様はグラン・ベルンを守りたかったかもしれないな」