シュガーラテ──命を救う腕に、甘えたくなる午後がある
ステージに立つ島崎の声が響くなか、
舞香はふと、すぐそばに朝比奈が来ていたことに気づいた。

「さっき、花びらとってくれて……ありがとうございました」

「あ、うん。あれ、すごく似合ってましたよ。
ちょっと名残惜しかったくらい」

舞香は思わず笑って、そっと目を伏せた。

「……朝比奈さん、今日はオフなのに、
来てくれて本当にうれしかったです」

「俺こそ、こうして話せるとは思ってなかった。
さっきまで、ずっと向こうから見てただけだったから」

舞香は、自分の指先を見つめたあと、そっと口を開いた。

「私、消防士さんって、もっと近寄りがたいのかと思ってました。
でも、朝比奈さんは……なんか、違ってて」

「それ、良い意味で……?」

「はい。だから、なんかこう……
“少しだけ近くにいたくなる”っていうか」

言ってから、自分で恥ずかしくなって、舞香は頬を押さえる。

「ごめんなさい、変な言い方でした」

「……変じゃない。むしろ、嬉しいです」

朝比奈は少しだけ、舞香の方に体を寄せた。
人の流れの中でほんのわずか近づく距離に、
ふたりの呼吸が、ふっと重なった。

「こういう日があって、よかったですね」

「……ほんとに」

小さな声で重ねられた言葉が、
ふたりの間にだけ、そっと響いた。
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