平安物語【完】
乳母は
「もう間もなくいらっしゃいます。
くれぐれも粗相のないように…
あぁ、やはり私が代わりたいわ。
もう少し私が若く見苦しくなかったら…」
などと言いつけて、落ち着きのないことこの上ない様子です。
―未だに若い殿方からお文が届く人が、見苦しいなんてよく言うわ。
そんな事を考えながら、私も緊張していました。
そんな時、研ぎ澄まされていた私達の耳は、遠くから聞こえる衣擦れの音を掴みました。
―いらっしゃる…
こんなに緊張して御息所殿のお通りを待つのは初めてだわ