平安物語【完】



どれくらいになったのか、しばらくそのまま泣いていました。

これまでに溜まった不安や嫉妬、不満や疑いなど全て流れ去ってしまったかのようでした。

尚仁様の腕の中こそが、私の居場所―…そう思う程に安心しきっていたのでした。

ずっとこうしていられたら―

御殿にお帰しもせず、他の方々とお逢わせもせず、ただただこの弘徽殿で尚仁様といられたら―

いえ…尚仁様と二人でいられるのならば、こんな内裏でなくとも立派な御殿と思えるのでしょうか…



< 143 / 621 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop