平安物語【完】
「え…?」
弁が、きょとんとした表情を浮かべて声を漏らしました。
「これまでも事実上は妻として扱っていましたが、名目上は弘徽殿と拙宅の掛け持ちの女房に過ぎませんでした。
しかし、この度のおめでたにかこつけて、弁の君をきちんと妻の格につけたいのです。
それならばこの機に突然弁の君を引き取ったと言っても、邪推はできないでしょう。」
「でも…っ!
あなた様の妻にして頂いては…女御様にお仕えできなくなってしまいますわ…
それに、大将ほどの御身分のあなた様の妻が、私のような数ならぬ身では……。」