平安物語【完】



「え…?」

弁が、きょとんとした表情を浮かべて声を漏らしました。


「これまでも事実上は妻として扱っていましたが、名目上は弘徽殿と拙宅の掛け持ちの女房に過ぎませんでした。

しかし、この度のおめでたにかこつけて、弁の君をきちんと妻の格につけたいのです。

それならばこの機に突然弁の君を引き取ったと言っても、邪推はできないでしょう。」


「でも…っ!

あなた様の妻にして頂いては…女御様にお仕えできなくなってしまいますわ…

それに、大将ほどの御身分のあなた様の妻が、私のような数ならぬ身では……。」



< 502 / 621 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop