平安物語【完】
右大将殿は、弁がいるらしい方に向き直って
「高い身分の女君を妻にしなくてはいけないという法は無い。
そなたでなければ、私は生涯妻は娶らぬつもりだ。
宮仕えは……
確かに、女房としてこれまでのように出仕することはできない。
しかし、昔なじみのよしみで親しくさせて頂けば良い。
そなたが弘徽殿やこちらの御屋敷へお訪ねしようと、私はそなたを束縛するつもりはない。
世間でも、名高い女御様の御許であればとやかく言うまい。
ある程度の節度を持つことは、そなたが出来るだろう?」
淡々と、でもどこか情がこもって優しく言いました。