ミントの恋のような
私は三ヶ月前からある食べ物がやめられない。

それはミント味の飴玉だ。口の中に入れれば広がるミント特有の爽快感と共に彼の匂いも思い出す。


このミントの飴は淡い緑色の袋に入っていて20個ほどで298円で売っているが、人気がないのか売り切れていたことは一度もない。

私はミントの飴を一粒口に含んだまま、自宅アパートから十分ほどのところにある海辺にきていた。

スニーカーに砂が入るのも気にせずザクザクと砂浜を歩いていき、テトラポッドの上に登って沈みゆく夕陽を見つめる。

つい三ヶ月ほど前までは、ここが私と元カレの聡太(そうた)とのお決まりのデート場所だった。


優羽(ゆう)、別れよ』

オレンジ色の優しい夕焼けの色を見つめていれば聡太の声が波の音と共にふいに聴こえてきて、耳を塞ぎたくなる。

聡太とは大学のサークルで知り合った。付き合って半年で同棲を始めた。そして聡太から別れを切り出されて運命の恋が終わった。

いや、運命だと思って溺れていたのは私だけだ。

「……別れる運命だったってことよね」

もし運命なんてものがこの世に存在するのであれば、それは間違いなく不確かで曖昧で誰にもわからないってことだ。

だから、私が勝手に運命の恋だと思い込んでいたけど、それは実は全くはじめから違うモノだったのだろう。

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