ミントの恋のような
溢れそうな涙をぐっと喉に押し込めば、ミントの香りが鼻からツンと抜けていく。

「聡太、禁煙できたかな」

このミントの飴を始めに見つけて買ってきたのは私だった。喘息持ちのクセに聡太が煙草をやめられないからだ。
煙草を吸いたくなったら代わりにこの飴をと渡した時、聡太はくしゃっと笑って私にありがとうと言ってくれた。

あと聡太には最後まで言えなかったが、私が聡太にこのミントの飴を渡したのには理由があった。

それはミントの花言葉だ。

──『かけがえのない時間』

私にとって聡太と過ごした時間はかけがえのない時間であり宝物だった。

「本当に……大好きだったよ」

過去形にしたのは、そうでもしないと聡太に電話をかけてしまいそうだから。

終わったんだと自分に言い聞かせるように吐き出した言葉は波に攫われて消えていく。 

私はため息をひとつ吐き出してからスマホを取り出すと、聡太の番号を消去した。
そして波音が静かに聞こえてくる海をじっと見つめた。

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