冷淡女上司を攻略せよ!~ヘタレ年下イケメン男子の恋愛奮戦記~
賑やかな晩飯が終わると、俺は大急ぎで当面の着替えや諸々をボストンバッグに詰め込んだ。そして1階に降りると、姉貴達も帰るところらしい。

「誠、冬美は私達が送って行くからね」

姉貴がそう言ってくれた。”冬美は”ではなく、”あんた達は”だろ、と頭の中で突っ込みつつも、これから電車に乗って冬美さんのマンションへ戻る事を思ったら、正直なところ有り難かった。

「おお、助かるよ。じゃあ、これはトランクに積ましてもらうかな」

そう言って俺がボストンバッグを持ち上げたら、冬美さんを除いた全員がキョトンとした。

「それは何なの?」
「え? 俺の荷物に決まってんだろ?」

「なんであんたの荷物を運ぶのよ?」
「なんでって、そもそもこれを持って行くために戻って来たんだけど?」

「……ひょっとして、あんた達一緒に住むの?」
「そうだけど、言ってなかったっけ?」

「聞いてない!」

冬美さんを除いた全員が叫び、耳が痛かった。

「おふくろには言ったよな?」
「聞いてないわよ」
「そうだっけ?」

「いくらなんでも、早過ぎない?」
「これには、言うに言えない事情があるんだよ。さあ、行こうぜ」

俺は、もじもじする冬美さんを、皆の視線から遮るように立ち、玄関に向かうよう促した。

「そういうわけで、しばらくは帰らないんで、よろしく」

「よろしくって、あんたは軽いんだから……。冬美さん、誠の事、お願いしますね?」

「はい」
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