冷淡女上司を攻略せよ!~ヘタレ年下イケメン男子の恋愛奮戦記~
田中と言う男のアパートに着いた。生意気にも洒落た2階建てのアパートで、奴の部屋は2階らしい。

辺りに人はおらず、警官はまだ来ていないらしい。俺には警官の到着を待つ気は更々なく、それは野田さんも同じと思われ、俺達は階段を静かに上がって行った。

「いますかね?」
「わからない」

俺が呼び鈴を鳴らそうとしたら、それを野田さんが制し、俺は横にずれて野田さんが呼び鈴を鳴らした。

果たして田中と言う男は中にいるのだろうか。そして、冬美さんは……

緊張して待つと、男の声で応答があった!

『どなたですか?』

「秘書課の野田と申します。田中様の昇格人事について、専務が折り入ってお話したいと申しております」

すげえ。よくそんな嘘を、スラスラと言えるもんだな。やっぱり総務って、舐められないんだなあ。

『それは本当ですか?』

という応答があり、カチャッと音がしてドアが手前に開いた瞬間、俺は素早くドアの隙間に足を突っ込み、手で思いっきりドアを開いた。

すると田中は、つんのめる様に前に出て、その胸ぐらを俺は捩じ上げた。
田中はグレーの上着を着ており、それはつまり、ここへは戻ったばかりという事だろう。

「な、なんだ君は!?」

田中は、メタルフレームの眼鏡を掛け、色白で神経質そうな顔をした男だった。上原は”イケオジ”と言っていたが、俺は好きになれない顔だ。

「冬美さんは中にいるのか?」
「そんな人は知らないなあ」
「惚けんじゃねえ!」

俺と田中がもみ合ってる内に、野田さんは俺達の横をすり抜け、部屋の奥へ入って行った。

それを見た田中は、

「おい、不法侵入で通報するぞ!」

と怒鳴り、野田さんを追おうとしたが、俺は田中の腕をグイと引っ張った。

「やれるもんなら、やってみろよ」


「冬美は無事よ!」

奥から野田さんの声が聞こえ、俺はホッと胸を撫で下ろした。

良かった……と思ったのだが、

「顔を叩かれてるけど」

俺はそれを聞き、冬美さんが過去に傷付けられた事も相まり、田中に対する怒りが爆発した。
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