冷淡女上司を攻略せよ!~ヘタレ年下イケメン男子の恋愛奮戦記~
「なんでですか?」

「普通は車でしょ? 電車なんか使う訳ないじゃない」

確かにそうだ。もっとも、”普通の拉致”がどういう物かは知らないが。

「冬美が拉致されたのは何時頃なの?」
「13時少し前です」

「2時間前ね。待ち伏せとは行かないまでも、そんなに時間は経ってないわね。冬美は大丈夫。きっと無事よ」

「そうですね。無事に決まってます」

もしも田中と言う男の行先が、そいつのアパートではないとしたら、振り出しに戻る事になるが、今はそれは考えない事にした。

不意に俺のスマホに社長からライン通話が来た。

「社長。申し訳ありません!」

俺は通話に出ると、すぐに謝罪した。

『どんな状況かね?』

当然だが、社長の声は不機嫌そうだ。

「田中という男のアパートへ、タクシーで向かっています」

『そこの住所を教えてくれ』

「はい。住所は……」

野田さんがすかさず紙を見せてくれ、それを俺は読み上げた。

『わかった。警官をそこへ向かわせるようにする』

「お願いします!」

さすがは社長だな。警官に来てもらえれば、こんな心強い事はない。

冬美さん、どうか無事でいてください!
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