四神の国の朱雀さま
四神と怪異
胸辺りまで伸びたオレンジ色の髪を一つにまとめ、目が隠れるほどまで伸びた前髪を黄色のヘアピンで止めた、昔から変わらない姿。

自分の赤い瞳が、姿見に映る自分の姿を捉える。

その姿に、僕はため息をつきたくなる。

僕の前世は、中国の神話に出てくる四神の1つ、南の守護神で夏の象徴・朱雀。

人類を脅かす「怪異」と呼ばれるものから、術を使って人々を守ってきた。

僕が、今、異国である日本にいる理由は分からない。何も、覚えていない。

……というか、僕の住んでいた国って……中国って名前じゃなかった気がするんだよなぁ……何だったっけ?

コンコンコン、とドアをノックされる音がする。

「朱雀(すざく)、白虎(びゃっこ)が麻雀やりたいってさ」

ドアの外から、ルームメイトである青龍(せいりゅう)の声が聞こえてくる。

僕は、ずっと青龍、白虎、玄武(げんぶ)の3人とルームシェアをして暮らしている。

3人とも前世の記憶があって、前世の僕と一緒に怪異から人々を守ってきた四神だ。

3人もまた、前世からの術……まぁ、魔法って言ったらいいのかな?が使えるよ。

「今、行く!」

自分の部屋から出ると、部屋の前には腰辺りまで伸びた青みがかった黒髪を1つに束ねた、青い瞳の男性が立っている。

東條碧(とうじょうあお)。今世の青龍の名前で、社会人。まだ学生の僕と白虎のために、たくさん稼いでくれている。

青龍と一緒にリビングに向かえば、白い髪に水色の瞳の白虎と黒い髪に緑の瞳の玄武が、家庭用の麻雀卓を囲んでいた。
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