四神の国の朱雀さま
朱雀と颯真
ふと目が覚めて、僕は体を起こすと伸びをする。
見慣れた、けれど数か月は見なくなった僕の部屋。ベッドから出て、僕は窓に近づくと窓から見える景色を眺める。
颯真に真実をすべて話した後、青龍と玄武と合流して、皆で怪異を倒した。
そしたら、僕らの住まう国・フォルスティアに帰ってきていて、四神の皆と黒い穴の消失を確認して、僕は南の街の1番南端にある、僕の家へと帰ってきて、翌日になったわけなんだけど……。
「……颯真、どこ行ったんだろう……麒麟様の話しじゃ、颯真もこの世界に戻るって……」
僕らが帰ってきた場所には颯真はいなくて、麒麟様に聞いたら「どこかにおるだろう」と返されたんだよね。
「……心配だし、見に行くかぁ……」
そう呟いて、僕はさっきまでいた世界では術を使わないと着ることの出来なかった、朱雀としての衣装に着替える。
耳飾りを耳に付けて、何の役割もなくなった扇子を片手に僕は家を出た。
異世界にいた時は、扇子を開いたら炎が灯った。だけど、もう開いても何もない。
僕らはもう扇子がなくたって、すべての術が使えるから。
異世界で使っていたこの扇子は、術を安定して使えるようにする補助具なんだそう。
この補助具を5つ、麒麟様が開いていた穴に落としてしまって、たまたま僕らの手元に来たそうだ。
歩いて、庭を囲むように浮かぶ、僕の鎖骨辺りまである雲の塀に手を乗せて、南の街全体を見下ろす。
ここは、南の街の1番南端の空に浮かぶ小さな島で、僕の住む場所。
この島は人間には見えてなくて、他の四神の住む島に通じる薄い虹の橋が掛かっている。